愛犬の体を支える五臓六腑
中医学では、体の中の臓器を「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」と呼びます。これは西洋医学でいう臓器とはちょっと違っていて、「働き」や「機能」を表す考え方なんです。
中医学の五臓六腑は、それぞれが独立して働くのではなく、お互いに支え合い、影響し合っています。この「つながり」を理解することで、愛犬の小さな変化にも気づきやすくなりますよ。
薬膳は、こうした体のバランスを整えるための食事法です。まずは五臓六腑の基本を知ることが、愛犬の健康を守る第一歩になります。
※注意:愛犬の体調に気になることがあれば、まずは獣医師にご相談ください。薬膳は日々の健康維持をサポートするものであり、治療ではありません。
| 五臓 | 主な働き | 対応する六腑 | 六腑の主な働き |
|---|---|---|---|
| 肝(かん) | 血を蓄え、流れを調整する。気の巡りをスムーズにする。情緒にも関わる。 | 胆(たん) | 胆汁を貯え、排出して消化を助ける。決断力にも関わる。 |
| 心(しん) | 血液を全身に送り出し情緒や感情のコントロール | 小腸(しょうちょう) | 食べ物から栄養と不要なものを分ける |
| 脾(ひ) | 飲食物から気・血を作る。水分代謝の中心。筋肉や四肢を養う。 | 胃(い) | 食べ物を受け入れ、消化しやすい形にする |
| 肺(はい) | 呼吸を司る。気を全身に行き渡らせる。体表を守る。 | 大腸(だいちょう) | 排泄をつかさどり、不要物を体外へ出す。 |
| 腎(じん) | 生命の根本。成長・発育・生殖を司る。水を調整する。骨や耳とも関わる。 | 膀胱(ぼうこう) | 体内の不要な水分を溜めて排出する。 |
さらに「三焦(さんしょう)」という六腑もありますが、これは形のある臓器ではなく「上・中・下」の水分代謝や気の通り道を意味します。
「肝」と「胆」〜血を蓄え、気の巡りをコントロール
肝は、自律神経や感情をコントロールする司令塔。血を蓄え、気の巡りをコントロールして、精神・情緒を調整する働きがあります。愛犬がリラックスできるか、イライラしやすいか、この「肝」の状態が関わっています。
胆は、胆汁を貯めて、食べ物から得た栄養を全身に届ける働きをします。
肝と胆は「表裏関係」といって、コインの裏表のような関係。胆の調子が悪くなると、肝も不安定になり、愛犬が落ち着かなくなったり、怒りっぽくなったりすることがあるんです。
「心」と「小腸」〜血液を全身に送り出し情緒や感情のコントロール
心は、五臓の中でも最も大切な臓器です。血液を全身に送り出す働きがあるため、体中の臓腑に影響を与えます。情緒や感情などの「こころ」とも関係が深いので、愛犬の「心」が安定していると、穏やかで落ち着いた様子が見られます。
小腸は、胃で消化された食べ物を受け取り、体に必要なものとそうでないものを分ける役割を持っています。
小腸と心も表裏関係。小腸の状態が悪いと、心も不安定になり、愛犬が落ち着かなくなったり、興奮しやすくなったりすることがあります。お腹の調子が悪いとき、なんだかソワソワしている様子があれば、それは小腸と心のつながりかもしれません。
「脾」と「胃」〜エネルギーを生み出す工場
脾は、食事を消化吸収して、「気(エネルギー)」「血」「水(体液)」を作り出す大事な場所です。四肢や筋肉にも影響を与えるため、脾が弱ると愛犬の足腰が弱くなることも。
胃は、食べ物を最初に受け入れて、ドロドロに消化したあと小腸へ送ります。
胃と脾も表裏関係。胃の状態が悪くなると、吐き気や嘔吐を起こすことがあります。食欲がなくなったり、食べたものを戻してしまったりするときは、この胃と脾のバランスが崩れているサインかもしれません。
「肺」と「大腸」〜呼吸と排泄のコンビ
肺は、全身の気(エネルギー)と呼吸をコントロールし、体に潤いを与える働きがあります。愛犬の呼吸が浅かったり、皮膚や被毛が乾燥していたりするときは、肺の働きが弱っているかもしれません。
大腸は、小腸で消化されたものから水分を吸収し、不要なものを便として排泄します。
肺と大腸は表裏関係。肺の働きが悪くなると、便秘などの症状が出ることがあります。呼吸器のトラブルとお通じの問題が同時に起こるのは、この関係があるからなんですね。
「腎」と「膀胱」〜成長と老化のカギ
腎は、成長や発育に深く関わる臓腑。腎が元気だと、愛犬は若々しく、毛艶も良好です。逆に腎が不調になると、老化現象が起こりやすくなります。
膀胱は、不要な水分から尿を作り、排泄する働きがあります。
膀胱と腎も表裏関係。腎の働きが悪くなると、頻尿や排尿困難といった症状が出ることがあります。シニア犬のおしっこトラブルは、この腎と膀胱のバランスが崩れているサインかもしれません。
「三焦」〜見えない通り道
三焦(さんしょう)は、ちょっと特殊な存在。実体のある臓器ではなく、気と水の通り道として、五臓六腑に栄養やエネルギーを送り出す働きをしています。体全体の巡りを良くする、縁の下の力持ちのような存在です。


